梅沢和木賞『導かれる者』

 
審査員評:
 
梅沢「ループが発生して公園から出られない状況がすぐわかるテンポが良い。3ループ目でコーヒーがこぼれたり、4ループ目で滑り台や木漏れ日が出て来る流れも良い。じわじわ液体が侵食していく映像も不安な感じを出せている。光が救いの象徴として描けているかというと微妙で、むしろ光も不穏な演出に見えた。全体的に不穏な感じの中でなぜか出られた、という印象を受けてしまった。また、最後のシーンも柵の内側にいるので公園出られたかが少しわかりにくい。
光に包まれて終わるのは悪くない。「闇」や「光」をモチーフの色で単純に結びつけるのではなく、現象としてとらえてもっとうまく演出出来ていたらかなり完成度が上がったと思う。惜しいです。」
 
清原「繰り反復、モンタージュ。編集することにより全く新しい意味を持つ、原初的な映像の関心を持っている。挿入される木漏れ日や風景のショットのモンタージュのテンポが小気味良い。繰り返される反復のうちに微妙な変化が訪れるという構成が世界が開かれてゆくことへの説得力を持たせている。」
 
ノガミ「主人公の中の時間軸が繋がってるのか、全てが巻き戻されてるのか、よくわからなかった。演者の演技で説明するのは、まだまだしなくていいと思う。というか、プロじゃないとできないし、演者さんに頼らない方がいいと思う。インサートで入ってくるカットが闇とかループを表現してるのはわかるかどうか微妙なところだったけど、ああいうカットを作る方が才能あると思った。アクションつなぎではないんだけど、テンポよく音に合わせる映像とかつくってみると楽しいと思う。Cyberlink俺もBD見る時に使ってるよ!」