清原惟賞 『Gaze』
審査員評 :
清原「歪んだレンズを通してぐにゃりとゆがんだ都会の日常的な風景と、夜の静けさにひびく足音がとにかく奇妙な感覚を与える。編集の感覚が素晴らしく異常な緊張感があり、最後に少女に近づき振り向く瞬間はもうそれは恐ろしいとまで思うような怖さを持った視点だった。しかし、カメラだけが視点を持っているのかというとどうもそういうわけではなく、どこからも見られている感じがして、カメラの視点自身ももしかしたら見られる対象なのではないか?とどこまでも入れ子みたいな印象がある。音響の使い方もかなり効果的で、街のノイズと対象的な夜の静けさの音を、あの足音が繋いでくれているように感じた。」
ノガミ「ミクロな視点で、夏休みの自由研究みたい。色収差がすごい出てたから、ネオンの光とか信号の色みたいなのがテーマなのかな?と思った。色々特殊な効果が多くてよくわからない印象があった。ラストのオチもわかんなかったけど、あまり気にしなくてもいいかな?と思った。終始続く歩いている音と、夜歩くのが好きな女子高生っていうだけでも興味深くなると思うから、もうちょっと視点の逆転とか、少女を映したり、カットの差があるといいと思った。所々魅力的なカットは多かったと思う!あと、石膏がある部屋が異質すぎてびっくりした(どばた)。なんかこういうビデオ的なテイストを使うのも良いかと思った。 https://youtu.be/YIkd3H4tEf4」
梅沢「夜の池袋の雰囲気は悪くないが、作者がなんとなく撮っているものを繋いだという印象は拭えない。映像の加工が効果的な時とそうでない時がある。良くも悪くもセンスにまかせて撮って繋いでいるので、もっと意図的な演出を増やして良い。暗闇で歩いている人物が作者なのか他者なのかわからないが、そのわからなさが作品の魅力に繋がっていけるよう頑張って欲しい。一瞬映った夜の美術予備校の場面がなかなか良かった。作者の現在のリアリティとも繋がる場所だと思うので、もっと有効活用してもよかったかもしれない。」