ノガミカツキ賞『spectrum』

 
審査員評 :
 
ノガミ「オートの露出自動調整が良かった。日光かと思ったら夜の街灯で真逆なものだったからびっくり。ちょっと絵画的な調子とかも良い。光について考えた発見もいいし、音とも合ってて見てて気持ち良かった。ビデオアートとか、昔の実験アニメを見ているかんじがあった(ピアノのクラシック音楽を使ってる当たりも。)最後の終わり方は、1カット目の終わり方と似てるから別の終わり方が必要になる。若くは、1カット目がせっかく長回しのみだったから、それだけで完結させた方が観客の集中力は捕まえられると思う。Good job!!」
 
梅沢「ズームによって発生するビデオノイズに着目して一貫して抽象的な世界を作ろうとした点は評価できる。音との兼ね合いで盛り上げようとしている箇所などもわかる。しかしちょっとわかりにくい。まだ地味すぎる。ズームによるノイズだけでドラマティックに魅せる構成をもっと頑張ってほしかった。時折見せる現実的な風景の入り方がタイミングによってはもっと効果的になるはず。光とノイズだけではなく、主人公視点のような物語要素を盛り込んで少し色気を出しても良かったのかもしれない。ノーマン・マクラレンの色彩幻想はフィルムで正にこういうことをやってる素晴らしい古典的な作品なので是非参考に。知っていたらすみません。」
 
清原「限界まで拡大したデジタル映像の粒がもはや別の何かに変容してしまうと、そこに人は別の何かを見てしまう。映像の網目をすりぬけて、ここまでいったらあとはどこにたどり着くことができるのだろう、というようなぎりぎりの映像の淵から、現実世界の実写映像を認識できるところまで戻る瞬間がスリリングで美しかった。映り込む何者かの人影のようなものの不穏さや、粒の世界を経て見た現実の異常さは、実験的なアイディアを追求していくうちに視覚としての美しさをもう一度取り戻してゆく。」