どばたムービーフェスティバル2017はLet’s play the movie (映像で遊ぼう)をコンセプトに、 公募作品によって構成されるオンライン映像祭です。

 

公募テーマ

「光」

当たり前のことですが、地球上の生命は太陽の光によって育まれており、人は光があるから物を見ることが できます。そういった光と影の関係を、正義と悪や、希望と絶望などの比喩とした表現も多く生まれてきました。映像表現においても光はとても重要で、自然光や人為的なライティングを利用し、数多くの印象的な映像が作られています。そのような光の魅力を、あなたなりのアイデアで、映像という形にして表現してください。

 

ゲスト審査員

梅沢 和木

1985年生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業。美術家。
インターネット上に 散らばる画像を集め再構築し、圧倒的な情報量に対峙するときの感覚をカオス的な画面で表現する作品を制作し、発表している。 CASHI及びカオス*ラウンジに所属。主な展示に『Empty god CORE』(2014年 B2OA gallery)、『LOVE展:アートにみる愛のかたち』(2013年 森美術館)、『特別展 手 塚治虫×石ノ森章太郎 マンガのちから』(2013年 東京都現代美術館)、『大地と水と無主物コア』(2012年 CASHI)、『カオス*ラウンジ2010 in 日比谷』(2010年 高橋コレクション日比谷)、等。

 

清原 惟

1992年生まれ。東京都出身。武蔵野美術大学映像学科卒業、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻監督領域修了。
武蔵野美術大学在学中に監督した『暁の石』がPFFアワード2014に入選。同卒業制作の『ひとつのバガテル』がPFFアワード2015に2年連続で入選、第16 回TAMA NEW WAVEにノミネートされる。その後、東京藝大大学院映画専攻に進学し、黒沢清監督、諏訪敦彦監督に師事し映画を学ぶ。日常性と謎が混在する独創的な映画を制作している。近作に藝大修了制作の『わたしたちの家』がある。

 

ノガミカツキ

92年製コンテンポラリーアーティスト。新潟県長岡市出身。ベルリン芸術大学でオラファーエリアソンに師事。武蔵野美術大学卒業。
文化庁メディア芸術祭19th新人賞、学生CGコンテスト20thグランプリ、ifva21th silver award、アジアデジタルアート大賞2015優秀賞、FILEやWRO、Scopitone等海外メディアアート祭に出演。VICEにアーティスト特集、WIREDやDesignBoom、装苑、映像作家100人2015など多数メディア掲載。group_inou等のMVや、CMなどを多数制作。

 

公募作品グランプリ

『並びゆく光』 葭原 武蔵

 

審査員評 :

梅沢「電車と千本鳥居は一見結びつかないモチーフだが、両者の共通点を見つけ出して小さなセットの中で光と影を操作し、魅力的に見えるようにと様々な工夫が随所に見られ、うまく繋がっている。水面の波紋、反射、連続する鳥居のシルエットと踏切の音と電車が通過する音を重ね、幻想的な映像の質感を作ろうとしている。何より、セットを照らす光源がまるで電車自体のライトだと自然に錯覚してしまうような演出がとても良かった。ミニマルな装置の中で2つのモチーフがかなり活用できている。最後のほうでお稲荷さまが出るシーンと、またBGMのセレクトがややストレートすぎる気もしたが、わかりやすいという意味では良かったと思う。今後も続けるのであればセットの完成度など、細かいクオリティの部分をどんどん詰めていって欲しい。」

 

清原「あるひとつの世界観を構築しようとしている姿勢がとても良いと感じた。光を効果的に使って、静止物で映像の運動を作り出す工夫が面白く、引き込まれた。電車への見立てや音響などユニークなアイディアがちりばめられており、本来関係のないモチーフを繋げることでまったく独特の世界観が構築されていた。」

 

ノガミ「最初音楽にびっくりしたけど、映像は一番力入れられてつくったかんじがした!影絵とか、ジオラマ使ったり、そういうアニメーションをしていく人なんだろうなーと思った。クオリティ高い画が多くて、(送られてきた作品リストの) 最後にこの映像だったから少しびっくりしたよ。ここまでいったら小さい事が気になって、フレームレートが下がった映像とかは全体のクオリティ下げるから最初のとことかあまり使わないでほしいかな。あと電車のノイズ走った映像もいらないかな。関係ないけど電車もノイズも「走った」ってこの表現なんかいいなと思った。それが雰囲気にも繋がっていたけど。電車と鳥居の発見に関しては、インスタレーションで見せてもよいのかなと思った。電車がジオラマの周りを走って、それででかい影ができていく的な。特にメディアアートでは有名な、クワクボリョウタさんのみたいに。( https://youtu.be/8EBF0qOKpns 4分あたりの表現とか参考になる気がする。) 紙のペラペラ感が草みたいに見えるのも良かった。あとクレジットももはや凝ったものをつくったのを見たい。」

 

梅沢和木賞 『導かれる者』 河城 ふみ

 (作品とコメントは画像をクリック) 

 

清原惟賞 『Gaze』 中村 友音

 

ノガミカツキ賞 『spectrum』 倉島 悠太

 

どばぞう賞 『花火』 吉岡 莉央

 

総評 :

梅沢「限られた時間の中でテーマと格闘しながら各自が工夫をしていて、総じてとても楽しめました。やはりプロの技術やスタッフなどがない中で独自の視点を持っているものが目立っていたと思います。しかし、特別な技術がなくても限られた中でクオリティを上げている作品もやはり強く印象に残りました。テーマである「光」がどのように生かせているかはもちろん重要ですが、テーマを生かせている作品は総じて映像単体としての完成度も高かったです。
各自ここからさらによく出来るという点が無限にあって、現段階では多少の差があって賞がもらえる人ともらえない人がいたりしますが、反省点を踏まえて継続して作り続けていけばその差は些細なものとなっていきます。今回の経験を生かして是非作り続けていってほしいです。」

 

清原「取り扱っている風景の多くは日常的だが、日常的な風景がここまで違って見えるのか、という純粋な発見があった。間違いなくひと夏の思い出になりうるものがそれぞれ写っているような気がしたが、個人的な範疇にそれが留まる様子もなく、見ているこちら側にむかって奇妙なほどにおいたつ映像ばかりだった。世界は存在する視点の数だけ存在するという確信と同時に、映像や視覚芸術の歴史や時間そのものが、この短い映像たちの中にも宿っていることを感じた。
共通項として興味深かったのは、時計の針の音や足音、心臓の鼓動など規則的に響く音響を使っている作品が多かったこと。それらの音響以外にも印象的な音を使い映像のリズムを構築している作品が多く、それぞれのリズムを心地よく感じながら観ていた。」

 

ノガミ「まずグランプリ決めには、「spectrum」と「並びゆく光」で迷ったけど、全体的な作品の美しさでいったらspectrumかなあ。音にひっぱられてるところもあるけど、美意識的な部分も感じる。まあ、音あっての映像だし、音に頼りつつ音を最大限利用して掛け算していくのはいい事だと思う。完成度の高さも評価しました!全体としては、去年の方がクオリティは高かった気がした。個性も去年の方が高かった気がしました。日常的なところから自分の視点を見せるような作品が多かったけど、どばたの授業中につくったのか、夜やどばたの教室が多かった。夜の映像を高校生がたくさん撮っているのはちょっと面白いし、個性に繋がると思う。人間関係を見せるのはまだ弱いから、自分の内なる部分を見せる方が直感的にやりやすいのかなと感じた。自分が作りたいと思う映像をつくるのも大事だけど、何かを発見していく「気づき」を感じる事ができるのが、課題で映像を作る事の良い事だと思う。もっと色々な事を観察して発見して、それが自分の個性とかに繋がっていくと思うので、夢中になって進んでほしい。枠にとらわれずに、自分だけの表現をみつけてほしい。あと、自分は映像学科を出てMVを作ったりメディアアーティストとして毎年何回も海外で展示しているし、梅ラボはコンテンポラリーアーティスト、画家として展示しまくってるし、清原は映画撮りまくってPFFでグランプリとってるし、色々な可能性がある。今やりたい事が多いって悩む人がとても多いけど、大学のうちに全部試して、またそこから考えていけばいいから、とにかく全て試していく、作る事に向かっていく心。自分に嘘をつかない事。こういう事を続けていけば、きっと楽しい人生になると思います。今回は会う機会はなかったけど、続けていればいつか会えると思うので、いつか会いましょう。一つ一つの事に真摯に向き合って行ってください!!」